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飛行機と船の深い関係。
二〇〇三年の初めに大ヒットした、木村拓哉君主演のテレビドラマ「GOODLUCK!」のおかげで、航空界の業界用語がずいぶん一般に普及したようだ。
なかでも、シップやCA(キャビンーアテンダント)あたりが代表的なところだろう。
業界では機材、つまり旅客機をシップと呼ぶ。
船だ。
フリートという用語も使うが、これはもともと艦隊や船隊のこと。
飛行機は、用語やシステムなどを、乗り物としてはるかに先輩の船から拝借している。
客船と旅客機は姉妹関係にあるといえるほどだ。
旅客機の乗降口は左側にある。
ボーディングーブリッジもタラップも、胴体左側の扉に付けられるのが原則だ。
ジャンボなど大型旅客機では、左右対称の位置に同じサイズの扉があるので、旅客の乗降はどちら側からでも可能だが原則は左側。
これはもともと船の伝統だ。
船の場合、操舵手は船の左側(左舷)に位置し、船は左側で接岸する。
英語ではそもそも左舷をポート、あるいはポートサイドという。
港の側だ。
ちなみに右舷はスターボードといい、飛行機乗りも左右をこの用語で表現する。
ボードは「舷側」のことだが、動詞だと「乗船する」を意味する。
従ってボーディングーブリッジは、客船用の乗船連絡橋から応用して、旅客機への搭乗連絡橋の呼称になったものだ。
ランディング(着陸)は、何となく航空の専門用語のように思われがちだが、こちらも、もともとは船客やクルーの上陸、船荷の陸揚げ、船の着岸、あるいは上陸場や荷揚げ場を意味していた言葉である。
操舵手あるいは水先案内人のことをパイロットという。
飛行機では、これを操縦士に借用したわけだ。
キャプテンも船から借りてきて機長とした。
機長は操舵手と同様に、コクピットでは必ず左側の席に座る。
ちなみにコクピットは、現在では英語の辞書でも、飛行機の操縦室が第一義になっているが、もともと闘鶏の囲い(コックのピットだ)に由来し、古くは軍艦の准士官の居室や傷兵室、ヨットや小型船舶の船尾操船席を意味していた。
客室はキャビンと呼ぶ。
そこで乗客係のクルー(これももともとは船の乗組員)を、最近はキャビンーアテンダント(CA)、フライトーアテンダント(FA)と呼んでいるが、元はスチュワード、スチュワーデスと呼ぶのが一般的だった。
このキャビンは、もともと客船の船室のこと。
ファースト、ツーリスト(エコノミー)というクラス分けも、船客のランクに由来する。
旅客機のオリジナルは、ビジネスクラスだけだ。
乗客を意味するパッセンジャーも元来は船客のこと。
客船には船客係として、執事から転じたスチュワードや、キャビンーボーイが乗務していた。
旅客機の世界ではこれも借用し、黎明期には乗客係のことを、エアースチュワードとかエアーボーイなどと呼んでいた。
スチュワードを女性形にしたのがスチュワーデス、かつてはエアーガールとも呼ばれた。
乗り降りのシステム用語の説明はこのくらいにして、いよいよ機内へ。
空の旅のはじまりだ。
大型機が多くなった現在では、ゲイト(搭乗口)から、ボーディングーブリッジを通って、直接機内に乗り込むのが普通だ。
搭乗の際も降機の際もこれを使う。
正確には、ポーティング・・ローディングーブリッジ、またジェットウェイともいう。
これは、その名の通り、大型のジェット機の時代になって普及したものだ。
入れ子式というか、望遠鏡式というか(英語ではテレスコーピックという)、動力で伸縮するトンネル式の通路である。
これなら雨や風の日でも心配ないし、階段がないからスムーズだ。
車椅子でも容易に搭乗できる。
このボーディングーブリッジ、一九五四年にアメリカのユナイテッド航空が、エアドックと名づけた囲いのある通路のテストを行ったのがはじまりとされている。
ちなみに、日本では三菱重工や川崎重工、新明和工業などが作っている。
ランプ(あるいはエプロン、駐機場のこと)にシップが駐機していて、ターミナルビルやサテライトと直結できる場合には、ボーディングーブリッジが使われるが、シップが”沖止め”(これも船の用語)になっていて、バスで乗客を運ぶ場合や、小型機の場合は、昔ながらのタラップが乗客の乗降用に使われる。
ローカル線やコミュータ(小型機による近距離輸送)で使われている中・小型機は、タラップを自蔵しているのがほとんどだ。
これをエアステアと呼ぶ。
折りたたみ式や蝶番式に上げ下げする階段になっていて、乗降で必要な際には降ろし、それ以外のときは機内に収納する。
タラップには、移動用に車輪が付いている。
かつては、旅客機が駐機すると、タラップをゴロゴロ押して行って、乗降扉の下にセットしていた。
現在ではもちろん自走式になっていて、トラックの背にタラップを背負ったタラップ車が普通だ。
これはパッセンジヤー・ステップなどと呼ばれている。
ちなみに日本では神鋼電機などが作っている。
タラップはもうひとつのステージ空の旅の文化史において、タラップは華やかなシーンに欠かせない背景だった。
一九五〇年代から六〇年代、空の旅は華やかさと豊かさのシンボルだった。
プロペラ機の時代とはいえ、旅客機が次第に大型化し、エアラインもルートも乗客数も成長していた時代である。
しかし庶民にとっては高嶺の花。
それだけに空の旅や旅客機の世界は、憧れの的たった。
庶民の憧れと夢を増幅したのが、セレブリティたちである。
映画スターや歌手(時には政治家も)などの有名人が、こぞって旅客機を利用した。
彼らは出発のとき、到着のときに、タラップで手を振り、笑顔を見せ、ポーズをとるのが定番、お約束だった。
そしてその写真が、新聞のフロントページや雑誌のグラビアを飾った。
セレブリティにとって、空港のタラップはもうひとつのステージだったのだ。
筆者たちの世代なら、日本航空のハッピ(当時ファーストクラスの乗客にプレゼントされた)を着て、タラップを降りてきた四人組、ザービートルズの姿がすぐに浮かんでくる。
一九六六年、羽田空港でのことだった。
ボーディングーブリッジが普及して、一般的にはタラップのステージも廃れてきたが、それでも国賓の来日や、皇室や首脳の外交旅行をはじめ、セレモニーやプロトコルにタラップは欠かせない。
北朝鮮に拉致された人たちが帰国した際、彼らがタラップから降りてきたのは記憶に新しいところだろう。
最初はキャビンーボーイ、タラップはもともとオランダ語で、乗降用のはしご、階段のこと。
旅客機の初期のころは、文字通りの鉄のはしごや、木製の階段が乗降用に使われた。
乗降ロが低く、地面からそのまま乗り込める機体もあったが、正装してハイヒールを履いた女性などが、はしごで乗降するのは大変だった(当時の航空旅客は一部の富裕層だけで、男性も女性も正装して乗るのが普通)。
そこでどうしても手助けが必要になるわけで、空の旅のごく初期からエアーボーイとかキヤビンーボーイ、エアースチュワードなどと呼ばれる、乗客係のスタッフ、つまり客室乗務員が登場することになった。
乗客の安全を守り、飛行中のサービスを担当する客室乗務員。
一般にキヤビンークルーと総称されるが、前述のように最近ではフライトーアテンダント、キャビンーアテンダントなどと呼ばれることが多い。
その存在は、今も昔も空の旅に欠かすことはできない。
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